私は周囲の人々の目にどう映っているのだろうか。暮らしの中でふとおもうことがある。従来心理学では自己の多面性が古くから議論されている。人はさまざまな集団に属し、その中で築く人々との関係性によって、属する集団ごとに私が形づくられるという考え方である。私と周囲の人々との関係性は日々のコミュニケーションの積み重ねによって成り立つ。したがって、私がどのような人間であるか考えるためには、私と他者のコミュニケーションを探究することが重要である。
コミュニケーションには、両者の間を行き交う言葉以外にも、表情やジェスチャー、姿勢などの非言語チャネルが存在する。なかでも表情は感情や意思などを表す行為(もしくは現れたもの)であり、人の印象を形づくる重要な要素として広く一般に知られている。
表情の重要性が広く知られている一方で、多くの人は他者とコミュニケーションしているときの自分自身の表情を知らない。誰かと会話をしているときの表情は、自身の思考や感情が現れるだけではなく、発話のための顔の動きや相手に対する反応が複雑に絡み合った“動いている”表情であり、ほぼ暗黙的に為されるからだ。
そこで本研究は、日々の暮らしの中で暗黙的に為されている表情という行為に注目し、会話時の表情を記録・分類・考察する。自らのコミュニケーションに関する暗黙知を探究することが目的である。
本研究は、「表情図鑑」というプロダクトの制作を通じて、自らのコミュニケーションに関する暗黙知を探究する方法を提案した。「表情図鑑」とは、図鑑の制作者が会話時に見せる特徴的な表情を集めた図鑑である。図鑑を制作することで、表情という暗黙的な行為を記録・分類・命名・解釈し、自らのコミュニケーションについて新たな洞察を得る。
図鑑は2部構成となっている。第1部では制作者が会話中に見せる表情を「表情明度」に基づき分類されている。
第1部の各ページは
第2部は、会話中に制作者とその話し相手の表情明度がどのように移り変わっていくのか、その特徴的なパターンを示している。
第2部の各ページにばは