甘い匂いから、ふと子どもの頃のエピソードを思い出す。ちょっと冷たい水を飲んで、ふと友達との冬の会話を思い出す。そんなちょっとしたきっかけから、過去を懐かしんだり、なんで思い出したんだっけ、と自分を振り返ったり。
本プロジェクトでは、日常的に起きるこの”「ふと」思い出す”という現象に着目し、その記録/ 振り返りを通じて自己開拓のための新しいライフログを提案します。「ふと」だからこそ切り込むことのできる暗黙的な繋がりに、毎日の記録でアプローチするプロジェクトです。
■目的 ―日常的な現象を材料にした自分インタビューとして―
ライフログと呼ばれる、日常での思いつきや感じたことを日記のように記録する取り組みは多くありますが、「ふと」に着目したものに出会ったことはありません。「ふと」は、「単なる偶然である」とスル―されることが多く、その現象を深掘りすることの意義が見出されていないためであると考えられます。
しかし、「ふと」は単なる偶然ではなく、自分自身では自覚していないけど確かにあるモノゴトの繋がりを示す大事な現象であると考えられます。この受動的な想起・連想には、暗黙的な結びつきが隠れているのではないでしょうか。
この現象を記録することで、生活の些細なきっかけを材料に、暗黙的であったモノゴトへの意味付けや関係性を再構築することができると考えられます。また、それは、自身が持っていた定番的なモノゴトのつなげかたに新たな観点を与えることにもなると考えられます。これは、自分に対するインタビューの一種であると考えられます。
日常的に起きる「ふと」であれば、日常の些細なきっかけら自身のあらゆる暗黙知へのアプローチが可能となります。また受動的に起きる「ふと」は、元々自覚しているモノゴト同士の繋がりを無視しています。それにより、説明のつかない繋がりに問い(つっこみ)を入れることができ、それらが新たな意味付けを見出すことを促してくれます。
日常的で些細な現象の記録から、自身の暗黙知にアプローチする対象として、多くのメリットを有するテーマであると考えられます。
■記録手法
@「ふと」カードで記録する
「ふと」カードは、日常的に起きる「ふと」という現象を記録するためのカードです(1つめの画像参照)。毎日持ち歩きます。
記録のタイミングは、「ふと」が起きたときです。何かを「ふと」思い出した時、何かが「ふと」浮かんだとき、何かしようと「ふと」思い立ったときなど、日常的に頻繁に起きる現象すべてが対象です。毎回記録する必要はありません。
記録の内容は、以下の3つです。
これらを、認識した順番通りに上から記録します。それにより、思考の流れが記録されます。 必要に応じて右側のスペースに図も描きます。
A「ふと」シートで振り返る
「ふと」シートとは、「ふと」カードで記録した現象を振り返るためのシートです(2つめの画像参照)。現象を記録した数日以内に使用します。
まず、記入済みの「ふと」カードをシートにセットします。
つぎに、「ふと」カード内にて想起や連想の起きた個所に番号を振ります。想起は、自身が今見ているものや聴いている物から、別の何かを思い出す現象を指します。連想は、思い出した内容から感情が芽生えたり、そこから新たに何かを思い出したりする現象を指します。
その番号に沿って、右側のメモ欄に当該想起や連想の理由を自由に記入します。その際、以下のような問いかけを行うことをお勧めします。
思い出したエピソードの具体的な内容に突っ込むことや、それらを思い出すきっかけとの関係性、そこから感じたこととの繋がりを細かく掘り下げることになります。
■今後の発展
本プロジェクトには、日常的に記録した「ふと」思い出すという現象を振り返り、モノゴトに新たな繋がりを見出す過程が含まれます。記録した現象を材料に、自分なりの意味付けを行っていくことが肝となります。しかしながら、その意味付けや理由付けには「こじつけ」がでてきます。これはデメリットとして捉えることもできますが、これをメリットとして活かすことが今後の課題です。
また、本取り組みによって、どのように自身の暗黙知へのアプローチが進んだのかを示すことも課題の一つです。