本研究は、筆者が過去に経験した編集者としての仕事を振り返り、特徴的な実践知を考察しました。筆者は、大学院に入学する以前、約6年景観デザインに関する専門誌の編集者として勤めていました。その仕事をする中で、いつからか編集者の仕事を『雑誌としてのプロダクトをつくることのみならず、人と人とをつなぎ支え合う関係性を構築していくこと』と考えるようになりました。それは筆者独自の仕事観であり、編集者としてのアイデンティティを形成した結果ともいえるでしょう。そこで本研究では、筆者独自の仕事観がどのように形成されていったのか、またどのように実践していったのか、日記の記録から当時の心情や行動を背景に、その過程を振り返ることで、実践知になる要素を明らかにする探索的研究を行いました。
●分析方法
分析にあたって、使用したデータは、筆者が過去に記録した、ソーシャルネットワークサービス上の日記を用いました。
使用したデータ一覧:
今回分析した対象
上記のデータをもとに、
@【mixi日記】【gooブログ】【編集部ブログ】の内容を日表にまとめる。掲載時のタイトル、内容の要約、要約に対するタイトル(コード)をつける。
Aそれぞれの日記がどのような関係性があるのか、図式化する。
※補足的に、雑誌の号数と担当ページ数(案件数)をまとめた表も作成し、同時期の仕事内容の参照を行いました。
結果:
筆者の日記を分析していくなかで、その都度読者となる人に対して異なる発信を行っていました。一時はソーシャルメディアの使い分けによって、複数の役割を演じていましたが、徐々に仕事に関する内容記述が多くなり、メディアの統一とともに編集者としてのアイデンティティが確立されていく過程が見られました。また、内容の記述の頻度や内容が自らのステータスの変化に関連していることがわかりました。さらに、メディアを活用しながら新たなつながりをつくり、雑誌の企画への反映も行っており、今後はメディアでのつながりと仕事の内容との関連性を分析していきたいと思います。
現段階では、twitterの投稿数とタイミングについてのデータに関する分析は行っていないので、mixi→ブログ→twitterというメディアの変遷が、筆者のつながりの形成の実践とどのように関連したのかも考察していきたいと思います。