ちょっとした日常会話をきっかけに、他者との関係性が深まることがあります。食事の席で偶然隣に座った者との議論が弾み、生涯の友となることもあるでしょう。そのような場で生起するコミュニケーションの質は、場の環境要因に大きく影響を受けています。例えば食卓におけるコミュニケーション(共食)を考えてみても、食事の献立や様式、食器の種類、共に食べる人およびその人数、食卓を囲む照明、音響環境など、その要因となる変数は多種多様です。食卓でのコミュニケーションが果たす役割は、現代社会における人間関係の希薄化に伴ってその価値が再認識されつつあるものの、そのメカニズムを詳細に研究した事例は少ないのが現状です。本研究では、共食におけるコミュニケーションを分析対象とし、食事がコミュニケーションにもたらす影響を観察します。
研究者が自ら観察者兼被観察者となり、様々な飲食店へフィールドワークに出かけています。共食行為のなかでも、特に焼肉やお好み焼きなどの協同調理行為を伴う食事の場に着目しています。本研究では、卓上で鍋や鉄板を使用してお好み焼き、焼肉などを調理する行為全般を指して,協同調理行為と呼びます。特に多人数が親睦を深めるための食事にて、鍋料理が採用されることが多いですが、これは協同調理行為がコミュニケーションの潤滑油として機能しうることを示唆しています。近年、会話分析や談話分析などのコミュニケーションに関する研究分野において、非言語コミュニケーションにも光が当たり、言語や非言語における複数の要素の強調や相互作用を分析し評価するマルチモーダル分析を用いた研究が進められつつあります。本研究でも、調理行為と発話のマルチモーダル分析の方法を採ります。超小型デジタルビデオカメラで食卓の映像を撮影し、映像分析用ソフトELANを用いて分析を進めています。
Rui Sakaida, Fumitoshi Kato, Masaki Suwa: How Do We Talk in Table Cooking?, International Workshop on Multimodality in Multiparty Interaction (MiMI2013), JSAI International Symposia on AI (JSAI-isAI 2013), Yokohama Japan, (2013.10). [paper(pdf)][presentation(slideshare)]
坂井田瑠衣, 加藤文俊: 会話と並行する身体動作がコミュニケーションを規定する ―お好み焼きの協同調理を介した食卓におけるコミュニケーションの分析―, 第27回人工知能学会全国大会, 富山県富山市, (2013.6).
坂井田瑠衣, 加藤文俊, 諏訪正樹: お好み焼きの協同調理行為を伴う食卓の場のデザイン ―座席配置がコミュニケーションに与える影響の分析―, 電子情報通信学会, ヒューマンコミュニケーショングループ(HCG), ヒューマンコミュニケーション基礎研究会(HCS), 静岡県浜松市, (2013.3).
坂井田瑠衣, 加藤文俊: 食卓のコミュニケーションを記述する, 慶應義塾大学SFC Open Research Forum 2012, 東京ミッドタウンホール&カンファレンス, 東京都港区, (2012.11).
Rui Sakaida, Fumitoshi Kato, Masaki Suwa: How Do We Talk in TableCooking?: Overlaps and Silence Appearing in Embodied Interaction, New Frontiers in Artificial Intelligence (JSAI-isAI 2013 Workshops,Kanagawa, Japan, Selected Papers from LENLS10, JURISIN2013, MiMI2013,AAA2013, DDS2013). (in press)